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PostHeaderIcon アイウトン、セレソンのアウトロー

ロマーリオ、ジーコ、ロナウド。彼等はクラブのサポーターたちから讃えられ、代表に選ばれて活躍し、そしてW杯という大舞台でその名を馳せた。サッカー・プレイヤーとして最高の栄誉を手に入れたのである。しかし、その影には彼等に負けないほどの才能を持ちながら、悲運にも歴史の影に消え去った選手たちがいる。世界はブラジルをタレントの宝庫と言うが、見方を変えれば、最もタレントを使い捨ててきた国でもある。現在も、いくら活躍してもセレソンに呼ばれない選手はゴマンといる。


現在、最も典型的な例がブンデスリーガ6年目で今季シャルケ04に移籍した31歳のFWアイウトンだ。昨シーズンは28ゴールで元所属チームのヴェルダー・ブレーメンを優勝へと導き、得点王と年間MVPプレイヤーのタイトルを手にした。ドイツにはファンが多い。
アイウトンはブラジル北東部パライバ州の貧しい町で1973年に生れた。1993年にブラジル南部の小さなクラブでプロ・デビューしてから1998年にブレーメンへ移るまで国内の中堅どころのクラブを転々とし、大きな脚光を浴びることはなかった。しかし、ドイツへ移籍してから年々、飛躍的に活躍するようになった。そしてとうとうブレーメンを優勝へ導き、ブンデスリーガ史上初の外国人年間MVPを受賞したのである。
アイウトンの走りはドスン・ドスンと太鼓腹を揺らす感じで愛嬌がある。本当は足が速くて、バツグンのシュートセンスがある。何といってもクレバーだ。典型的なマリーシア(ずる賢さ)の持ち主(FC東京のアマラウのような)で、何気なくDFの裏をかき、あっさりとゴールを量産していく。とにかくイメージとプレーのギャップが大きく、そんなところがドイツ人に評価されるのかも知れない。
そんなアイウトンの最大の夢はワールド・カップに出場することだ。それも、なりふり構わず、どこかの国の代表チームの一員になるつもりのようだ。まずは、母国セレソンのパヘイラ監督には「私は次回W杯の開催国ドイツでこんなに活躍しているのに、何で一回も呼ばれないのだろう」とアピールしたが、今のところ見込みは薄い(ロナウド、アドリアーノと比較されるのだから)。その後、ドイツ・サッカー協会とも話し合いを持ち、最後には今年3月にカタール代表(当時の監督はトルシェ)の一員になることに合意したが、結局FIFA直々の禁止命令により計画は水の泡となった。
「一つの町なんかじゃない、一つの国の全ての人々が自分の名前を叫んでくれたら、どんなに嬉しいだろう」。アイウトンの純粋な気持ちだ。近頃は、大金を払ってくれるクラブを優先して、代表チームをないがしろにする“ビッグ・プレーヤー”が多いなか、アイウトンの言葉はみずみずしい。
アイウトンは毎年、数億円の年俸をブラジルの田舎に送金し、親族全員で様々な投資事業をしているという。近所の知り合いや、ろくに知らない隣人からお金の頼みごとがあれば断ることなく、自転車の購入やトラックの修理代など気前よく肩代わりするらしい。「ノーと言えない性質なんでね」。心の広いブラジル北東部の田舎者だ。
アイウトンの夢は実現するのか?
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