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PostHeaderIcon ブラジレイロンの現状

今年で2年目を迎える前・後期総当たりのブラジル・リーグ。参加クラブは24チーム、4月21日から12月19日までの8ヶ月間に46節が行われる。たから“ブラジレイロン”、でかいブラジル・リーグと呼ばれる(実は総当たりリーグになる前は各州リーグが半年あり、これとの規模の差を明確にするための名称であった)。はっきりいって、この長丁場にとまどいを隠せないサポーターたちは大勢いる。
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一部のサポーターの言い分は総当たりのリーグではトーナメント方式のホーム・アウェー対戦(リベルタドーレス杯やヨーロッパCLのような)による準決勝や決勝といった興奮極まる試合がないという。確かにそうだが、総当たりの良さは大会を通してベストなチームなチームが優勝するという、最も組織力の高いチームが評価されるのである。
これは一種の文化の変化であり、一部の人気クラブはどうも力の入れどころに苦しんでいるようだ。それというのも、現在36節目が終了したブラジレイロンでは優勝争いをしているチーム数よりも降格逃れを争っているチームの数の方が多いからである。
あと10節つまり、30ポイントを競いあっている状況で、優勝争いに加わっているのは上位の6チーム。1位で勝ち点69のアトレチコ・パラナエンセ、2位の勝ち点89のサントスを筆頭に、3位タイで勝ち点62のサンパウロとサン・カエターノ、5位タイで勝ち点59のジュヴェントゥージとパルメイラスまで。7位のコリンチャンスからは勝ち点54以下で正直望み薄だ。
一方、降格する4チームの枠から逃れるには勝ち点50が予想ラインとされるが、現在15位で勝ち点43のパイサンドゥから下の9チームが予断を許さない状況にある。23位で勝ち点35のグレミオ、24位、つまり最下位で勝ち点34のグァラニの2チームは危機的状態にあるといえる。
24チームのうち6チームが優勝の可能性、10チームが降格の可能性がある。チーム運営に困難しているチームの方が多いということである。特にリオの4大チームのうちフルミネンセを除く3チーム、フラメンゴ、バスコ、ボタフォゴが降格危機圏にいる。他にもミナス・ジェライス州のアトレチコ・ミネイロ(G.シウバ、トニーニョ・セレーゾなどを輩出)、リオ・グランデ・ド・スウ州のグレミオ(ロナウジーニョなどを輩出)やバイーア州のビトーリアなどの大衆クラブが降格の危機にある。
大衆クラブの経営者からしてみれば降格ほど恐ろしいものは無いはずである。バスコ、フラメンゴ、ボタフォゴ、グレミオ、アトレチコなどは一つの時代を築いた名門で、それぞれのクラブの低迷の理由はともかく、いま苦難を強いられている。とくにリオのチームはこれまでのトーナメント方式の戦い方に見合った短期的に有名選手をかき集め、借金までしながら決定的な数試合を勝ち抜くというやり方が身に付いており、新しい方式に適応できていないのは明白だ。
こうしたやり方はべつにブラジルに限ったことではない。ヨーロッパでも瞬く間に高額選手を多数集めたクラブは基本的にすべてが赤字体質なのではないだろうか。一時のラッツィオやバルセロナなどが良い例で、現在のレアルはサッカーの試合以外にマーケティング収入を大きな経営資源として頼りにしているはずだ(だからこそ敗北のイメージは御法度なのだが)。日本のプロ野球も周知のとおり、選手の年俸は上がる一方で、親会社頼みの赤字経営が話題になっている。
つまり、ブラジレイロンの総当たりリーグに反対する声はこれら低迷するビッグ・クラブ陣営から出ているのである。一方、首位を行くアトレチコ・パラネンセ、サントス、サンパウロ、サン・カエターノはいずれも規模の差はあるものの経営が安定しているクラブだと言われる。サントスとサンパウロは規模が大きい分、毎年数人の選手をヨーロッパ・クラブへ移籍させ財務を黒字に保ち、一方アトレチコとサン・カエターノは規模は小さいものの、無理な経営計画を立てず選手が安心して仕事ができる環境を整えていることで定評がある。
総当たりリーグは長い目でみれば、ブラジル・サッカーに重要な変化をもたらすだろう(そもそも、誰かがそれを見越したから導入されたのだから)。まず何と言ってもクラブ経営手腕の重要性が増し、中長期的なチーム経営ができないチームは規模はどうであれ、淘汰されること。そして、経営をさらに安定化させるための様々なマーケティング戦略の展開が必要になってくること。つまりチームのブランドをサポーターだけでなく、国境すら越えて販売するという、ヨーロッパ・クラブやアルゼンチン・クラブがやっていることが必要になってくる。
この話題については、いずれ知っている範囲で書くつもりであるが、とにかくブラジルのクラブはそうした変化を求められており、ぜひやるべきである。なぜなら、クラブ財政さえ上手く運営できれば、あとは草のように生えてくるクラッキたちをピッチに立たせるという、世界一の好条件に支えられるからである。
大切なのはブラジルの観衆に喜びをもたらすことだ。

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