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PostHeaderIcon ブラジル側から見たホビーニョ移籍騒動とマネーゲーム。

クラブ間で合意に至ってない移籍話をスペイン、ブラジルをはじめ世界中のメディアが(めでたく)まさに“生放送”で報道している。ホビーニョはコンフェデ杯後、レアルにすんなり移籍するように見えた。メディアの方でも移籍が決定したような書き方をするので世界中(レアルの訪問を受ける北米や東アジアの日本や中国などでも)で、もうホビーニョはレアルの選手のような錯覚に陥ってしまっている。一番そう思っているのがホビーニョ自身だが。


フッチブログ的な見方では、今回の移籍ケースは今後ブラジルで大きな影響をきたすに違いない。ヨーロッパ最大のクラブからのビッグオファーにすんなり応じないサントスの考えは何なのか。まだ終わりを見ない移籍騒動を見守りながら、そこに焦点を当ててみたい。
ヨーロッパの移籍情報の推移はレアルファンのファーポコさんのブログで逐一記録されているので、そちらを参照して頂きたい。
ブラジル側の情報を追っていくと、「レアルに行きたい」と言っているホビーニョをすんなり放出しないサントスだが、クラグ会長のマルセロ・テイシェイラは「ホビーニョはいつでも放出する。選手と交わした移籍に関する契約上の条件され満たされれば」と主張しており、ホビーニョを出さないとは一度も言っていない。
ホビーニョの契約内容の詳細を知っている人は、クラブフロント、ホビーニョ自身、ホビーニョの代理人ヴァギネル・ヒベイロ、ホビーニョの父などだそう。昨年後半に更新されたホビーニョの契約の中で公表されたのが:
?契約期間を2008年1月まで延長
?クラブ・選手のどちらかが一方的に契約を破棄した場合、5千万ドルの違約金の支払義務が生じる
?ホビーニョ移籍金の権利のうちクラブ70%:ホビーニョ30%の比率を60%:40%にする
?ホビーニョの年俸をまずは倍増(推定月給20万レアル、1000万円ほど)
これら契約内容はブラジルサッカーでも最高級のも(コリンチャンスのテベスの次と噂されている)ので、ホビーニョ自身にとっても凄く良い納得のいくものだった。同時に、サントス側は契約の満了を待たず(満了すれば、クラブには移籍金が入らない)、2006年ワールドカップ後にヨーロッパのビッグクラブにホビーニョを移籍させる計画だともはっきりと公表した。おそらくW杯でのホビーニョの活躍を信じてのことであろう。
昨日のメディアでは、ホビーニョが移籍金の40%を貰わないことを理由に、レアル側が違約金5千万ドルの60%に相当する3千万ドルを保証した(銀行間支払保証レター、L/Cというもので、レアルがCBF経由でサントスの口座に実際に金を振り込んだ訳ではない)ため、移籍決定だと報道された。だが契約にはクラブの合意なく一方的に移籍する場合は5千万ドルをまるまる違約金としてクラブに支払わなければならない、とある。つまり3千万ドルは大金だが、それでは足りないということ。サントスが「レアルから違約金を受け取ってない、だからホビーニョはまだサントスの選手だ」というのは正しい言い方である。サッカー協会やFIFAだろうが、どこに出ても訴えられらる筋合いがない。
ホビーニョというヨーロッパリーグでの実績がない選手に5千万ドルはどう考えても非現実な話である。サントス側だってレアルがこの金を払うとは思っていないはず。なぜサントスはレアルと移籍交渉をしてホビーニョを単純に移籍させないのか。移籍の場合にはサントス60%、選手40%という比率で移籍金の分配(権利金)が行われる。
問題はこの交渉テーブルの座についている関係者のようで、キーパーソンはホビーニョの代理人ヴァギネル・ヒベイロ。彼についてはちょっと調べが足りないが、カカをサンパウロFCからミランに移籍させ、サントスと契約更新したばかりのルシェンブルゴ監督を電話一本でレアルに行かせた「ブラジル・サッカーの裏のドン」の一人である(ロナウドの代理人だと勘違いしましたが、ファーポコさんの指摘で違うことに気付きました)。ホビーニョの移籍の件でも彼は選手の代理人とレアル側任命の交渉人を兼ねる(こんなことしていいのか?)。ちなみに、スペインのアス誌やマルカに移籍決定のニュースを吹聴しているのも彼である(それを鵜呑みにしてトップ面に載せるスペイン・メディアもどうかしてるが)。
ヒベイロの作戦は巧妙極まりない。「ブラジルは治安が悪いから、家族も住みたくない」などとホビーニョに言わせているが、じゃあホビーニョは選手生活を引退してもブラジルに帰ってこないのだろうか。これまでの経緯に関しては、6月に南米予選とコンフェデ杯に招集されているうちにサントスは国内リーグの首位から転落、最大目標のリベルタドーレス杯も準々決勝で敗退してしまった。なのに、コンフェデ杯決勝の翌日、ドイツのホテルの入り口で「レアルに行きたい、サントスはボクを放出してほしい」とテレビリポーターに言っていた。それを観たサントスの会長は何と思ったろう、サントス・サポーターは。付き合っていた彼女に友達経由でフラれるような気持ちではないだろうか(フッチブログにはその経験はないが、フフ)。まずはブラジルに帰国してクラブ側と内輪だけで話をするのが筋だろう。それどころか、帰国してもう3週間もチームの練習にすら参加していない。チームメイトは必至で国内リーグを戦っているというのに。サントス・サポーターはもう二度とホビーニョの顔を見たくないと言っている。
先の40%の権利金を放棄するというイルージョン作戦もそうだし、それにホビーニョ自身が「レアル以外行きたくない」と言ったのも附に落ちない。チェルシー、ベンフィカ、PSV、ユベントス(ユーベは超セコイ作戦)などのクラブが接触して来ていると言うのに、プロとしておかしくないか。そもそもバルサ本営のスポルト紙が指摘するように1年前、ホビーニョは「バルサに行くのが子供のころからの夢」と本心を明かしていた(驚愕の)事実がある。ホビーニョはヒベイロに洗脳されている、とサントス・サポーターが嘆くゆえんだ。実際は移籍金の選手側の比率はホビーニョ30%、ヒベイロ10%(計40%)とまで言われており、ヒベイロがレアルから受け取るインセンティブはさらに美味しいに違いない。違約金でチームを去った場合、選手・代理人ともに一銭ももらわない(表向きは)。今回のサントス会長の姿勢にブラジルサッカー経済に巣くう悪徳代理人との戦いの構図が見え隠れする(もちろん代理人の存在自体は不可欠だが)。だから、このケースは今後の移籍事情に影響すると思うのである。
対照的な例は、同じくコンフェデ杯のセレソン・メンバーでサントスの黄金期を築いた左SBレオ。帰国後、練習に合流し中1日でリーグの試合に参加。翌週、すんなりとポルトガルのベンフィカに移籍。28歳という年齢もあるが、レオには「海外から良好なオファーがあれば選手が主体で合意できる」という条項が契約にあり、違約金はたったの30万ドルだった。ホビーニョも「リベルタドーレス杯の後、テイシェイラ会長は海外から1千500万ドル以上のオファーがあれば応じる」と口約束してくれたと主張しているが、ホビーニョ自身が給料を払っているチームに合流しておらず、サントスとの本契約を守っていない。
テイシェイラ会長は他にも「ヒベイロ代理人やレアルのペーペー交渉人じゃなく、ペレス会長が直接来い」と主張したとも噂されている。昨年12月、ブラジル選手権を優勝してから交渉を重ねて契約延長をしたばかりのルシェンブルゴ監督をその1週間後にさっさとレアルに持って行かれた恨み、代理人の仕掛けやマスコミを利用した「通信販売的」な選手獲得に憤りを感じたのだろう。(フッチブログ的にはルシェンブルゴ監督の移籍には大賛成で、彼の今季の成功?ひいてはレアルの成功になる?がヨーロッパサッカーでの最大の関心事)
ところでレアル側はなぜここまでクラブ間で合意に至っていない移籍話を公表したがるのか。普通、商売事は本筋で合意に至ってから公表するもの。憶測ではつまり、今年の移籍市場での中心的な話題、さらに北米・アジアツアーへの話題(比べてライバルのバルサの話題はいまのところ乏しい)を提供することによって関心を高め、マーケティング・マネーを期待しているのではないか。株投資をしたことのある人には理解しやすいはず。これがサッカービジネスのトレンドなのだろうか、こうなればホビーニョの移籍騒動と日本人サポーターの関連性までが見えてくる。ホビーニョが移籍しなくても、その話題だけでレアルは金を生み出せるのである。
最後にサントスは犠牲者なのかと聞かれると、そうでもない。ホビーニョに3千万ドルの価値があることを証明できたクラブには次から次と逆オファーが提示されているそうな。すでにジオバンニをギリシャから呼び戻し、レオ・リマをポルトから、さらに「最後はサントスに戻って選手生活を終えたい」と言い始めた海外リーグの選手にベティスのデニウソン、そして何とレアルのロベカルまでが。クラブに潤沢な資金さえあれば、全てが可能なわけだ。
マネーゲームで失われたもの、それはサントス・サポーターのホビーニョに対する愛情だろう。
終焉を迎えたサントスの黄金チーム(このチームこそ、日本に一度でいいから来て欲しかった)
2002年全国優勝チーム
santos2002.jpg
2004年全国優勝チーム
santos2004.jpg

918 Responses to “ブラジル側から見たホビーニョ移籍騒動とマネーゲーム。”

  • jumpin says:

    フッチさん
    すごく興味深い、おもしろい記事でした。
    11月ぐらいから半年かけてここにいたっていますが
    結局何も変わらず、変わった点はロビーニョへのファンの気持ちが失われたことで、むごいなあと思います。
    レアルファンなのでどうしてもマドリー寄りに解釈してしまいますが、それにしても納得できないやり方をやっているなあというのが透けて見えてきますね。
    ロナウドの代理人って「マルティンスとピッタ」という名前をよく聞くのですが、今回のこのヒベイロさんという代理人は仲間(ボス?)になるんでしょうか。
    インテルから移籍にも絡んでいたということはヨーロッパサッカー界にも深く浸透している人のようですね。
    ティシェイラ会長にとってはこの移籍が壊れても困らないので、マドリーが断念しないならば5000万払うというところで落ち着くほかはなさそうですね。

  • フッチブログ says:

    jumpinさん、
    ご指摘ありがとうございました。
    よく調べてみたら、ロナウドの代理人は違う人でした(ここが私の限界かな)。フィーゴと同じ人らしいです。マルチンスとピッタはとうにロナウドの側近から外れ、ブラジルで逮捕までされてます。
    ヴァギネル・ヒベイロのボス格がウルグアイ人(売る具合人)のJuan Figerという人、この人は有名。まあこの代理人話、尽きないほどネタがありますから、またいずれ。
    レアルのやり方はしょうがない面もあると思いますよ。だって、世界でも最もタイトルを義務づけられたチームですからね。
    まだ移籍の締め切りまで8月末まで色々あるはずですね。

  • kobo_natsu says:

    初めまして。いつもお世話になっているjumpinさんのご紹介を受けてやってきました。よろしくお願いします。
    こちらの記事、大変興味深く拝見させていただきました。
    臨場感溢れる貴重な情報と、緻密な検証により、この問題についてとてもよくわかりました。
    個人的には、ロビーニョの移籍騒動を露出することは、クラブのイメージダウンにつながり、一見不利なのではないかと思っていたので、それさえも広告に使い、マーケティング・マネーを当て込むという、マドリーの策略(?)については、はっとさせられました。
    今日、マドリーが来日することもあり、とてもタイムリーな話題をありがとうございました。
    また、拝見させていただきますので、よろしくお願いします。

  • フッチブログ says:

    kobo_natsuさん
    こんにちは、ご自身のブログ、ファーポコさんのブログで存じ上げています。
    マーケティングの話は私がすごく興味あるもので。セレソン以外にもいずれ、世界ツアーができるブラジルのチームが出現すればいいなあ(日本のプロモーターも頑張っていることは知っていますし)と望んでのことです。
    ここまでこじれて移籍して、
    もしホビーニョがレアルで活躍できなかったら、どうなるんですかね。第二のサビオラ?

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  • 独楽 says:

    はじめまして。独楽と申します。
    ホビーニョ移籍騒動の一連の流れ、非情に面白く拝読させていただきました。
    そうかぁ。そんなことが起こっていたんですねぇ。
    いや、びっくりでした。
    目から鱗でした。ありがとうございます。
    しかし何よりも驚いたのは、
    ホービニョってバルサが好きだったのかぁ!
    こうなったらバルサが掻っ攫えばいいのに…(邪笑)
    トップにエトー、左にロニー、右にホビーニョで丸く収まりませんかね?
    黒い弾丸3人衆って感じで見ていて面白そうです♪
    バルサのラポルタ会長、今から頑張れ!
    なんて、バルサファンの戯言でした。

  • フッチブログ says:

    独楽さん、はじめまして。
    長文を読んでいただき、大変光栄です。
    ホビーニョのこのケースは、ブラジル・サッカーの新しい「判例」になると思います。それについては、いずれ移籍が決定してから(まだ書くのか、って?)。
    バルサはあいにく「チャリーン」が不足なようでして、「レアル以外は行きたくない」宣言はチェルシーへの牽制だと私は思うのですが。
    「5千万ドル?…ホレッ!!」とアブラモビッチなら出しそうですからね。
    つまりホビーニョは不正入札に加担しているようで、サントスの会長にしてみれば一番高いオファーを出すとこに売りたいに決まってますよね。
    まあ、8月末の市場閉鎖まで、どう落ち着きますかね。
    トッププレーヤーたちは新シーズンに向けてコンディションを上げているというのに、ホビーニョは大丈夫だろうか、と心配してしまいます。

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