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PostHeaderIcon ジェルソンとペレ

今日のオ・グローボ紙のカラザンスのコラムには、ペレの映画に70年W杯セレソン司令塔のジェルソンの映像がない理由と今のロナウジーニョのプレーに対する違和感についての二つの面白いコメントがあった。


まずはジェルソン。ペレのドキュメンタリー映画「Pele Eterno」制作のさい、ペレのスタッフがジェルソンに映像の使用許可を電話で打診した。それもそのはず、70年W杯のペレのいくつかのゴール・シーンはジェルソンのスーパーパスから生まれているからだ。会話のくだりはオ・グローボ紙の記事からそのまま訳した:
ペレのスタッフ:ジェルソン、ペレの映画にあなたの映像の使用を許可してほしいのですが。
ジェルソン:いいよ、書類を送ってくれればサインする。
スタッフ:それに千五百レアル(5万円ほど)を渡すようにペレに言われました。
ジェルソン:それは、どういう意味だ?
スタッフ:映画に映像が出る全員に支払っているんです。
ジェルソン:他の人がどうしたかは関係ない、なんでそんな金もらわなくちゃいけないんだって聞いているんだ。俺が必要としてるとでも思ってるのか。もう書類は送らなくてもいいよ、サインしないから。
スタッフ:気に障りましたか?
ジェルソン:やり方が気に入らないんだよ。
スタッフ:じゃあペレの映画に出れなくてもいいんですね。
ジェルソン:そう!お前もペレもクソくらえだ。
数日後、ペレがニューヨークから国際電話をかけてきた。ペレのやんわりとした説得にジェルソンは再度映像の許可を承諾したものの、こう付け加えるのを忘れなかった:ペレ、今度からはお前が直接電話してこい。
それから少し、ペレがテレビのインタビューで70年W杯の試合中、控え室でタバコを吸うジェルソンに注意をしたと語った。ジェルソンはそれについて「ペレが俺にいつ注意したんだ?いつから俺にそんなこと言える身分になったんだよ。ふざけるなってんだ」と根も葉もない話だと否定している。
ペレのドキュメンタリー映画は封切りされたが、ジェルソンの映像はそこになかった。そして今年発表されたペレ選出による世界のベストプレーヤー100人にもジェルソンの名前はなかった。一見、ガキのケンカのように見えるが、これが70年W杯の栄光のセレソン・メンバーにとって最も悲しい内輪もめとなった。フッチ・ブログははっきりと言いたい、ジェルソンというブラジル史上最高のランサドール(パサー)をリストから外すなんて、ペレの不当な行為だ。
ジェルソンは海外ではあまり知られていないが、生粋のカリオカで現役時代には「黄金の左足」と言われていた。今はテレビやラジオで解説者を務めるが、試合が面白くなければ一言「試合はつまらない」といえる自然体のサッカー人である。二人のアイドルのいざこざは悲しいかぎりであり、なぜ王様ペレが意外とブラジル国内で支持されないのかを物語るエピゾードだ。ペレも強烈なエゴの持ち主だということだ。
映画の件ではジェルソンは一向に意に介していない。その後ペレの映画を平気で見にいき「ペレがフリーで受けたあのロング・パス、いったい誰が出したんだろうな、ハハハ」と一蹴している。リストの件では同じように選出されなかったリベリーノなどの同僚を気遣い、テレビでペレのリストを取り上げ「こんなもん紙切れだ、おれは永遠に無名でいいよ」と破いて見せた。ジェルソンのようなスケールのでかいサッカー人はそうはいない。
次はロナウジーニョの話。彼は最近少し変だ。カラザンスもこう書いている:“最近のロナウジーニョは自分のプレーを飾り付けようと不必要な気を使っている。どんな場面でも天才的でいなければならない、という強迫観念にかられているようだ。それとも、こんなもんでもう天狗になったのか。明確なのはセレソンよりもバルサにいるときの方が良いプレーをすることだ。まあせめて、今晩のカカとの対決は必見だと言っておこう。”
こうした批判があるおかげでブラジル・サッカーは健全でいられる。この文章は6年前にもそっくりそのまま使われた。ロナウジーニョの名前の代わりにリバウドという名前があったのだが。そのおかげかどうかは知れないが、リバウドはそれから4年後、日韓W杯でロニーと二人で決定的な活躍をした。
70年W杯決勝戦で2点目のシュートを放つジェルソン、美しいシーンだ。
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885 Responses to “ジェルソンとペレ”

  • あるまじ says:

    最近こちらのサイト発見しました。
    全ページ、大変興味深く読ませていただいてます!!
    ジェルソンってそんな人なんだー!
    なんか一見物静かで気難しそうに見えるんだけど(私だけの印象かな?)
    あだ名がparrotってのはよくしゃべるから、ってどこかで読んだ記憶があります。
    プレイは70年ワールドカップのビデオでしか見てないのだけど。。
    ゆったりドリブルしながら、ほんと綺麗な測ったようなロングパス通してますよね。
    チェコ戦のアシスト、あと決勝の3点目のペレの頭にぴったり合わせる奴!
    今でも脳裏にあざやかによみがえります。
    あのチームの左利き3人:ジェルソン、トスタン、リベリーノ、
    はほんと素晴らしいの一言です!
    トスタンの不思議なというか幻想的かつ知的なプレイ、
    リベリーノのあの気違いじみたスピードのフェイント、キック!
    とにかく素晴らしい!!

  • フッチブログ says:

    あるまじサン、
    どうも、はじめまして。
    こんな古いエントリーに興味示してくれて、サンクスです。
    ジェルソンってのは、ブラジルが誇るサッカー人。その歯に衣着せない発言はいまでも存在感たっぷり。
    正直、あっしはつい最近まで、とんでもない勘違いしていたんだけど、70年のセレソンの10番はジェルソンだと思ってた。
    64年からボタフォゴ入りした彼は、ジジからポジションを譲り受け、ガヒンシャ、ジャイルシーニョ、カルロス・アウベルトたちを指揮したらしいですから(もちろん、あっしは観てないです)、もうスーパーな存在に違いありません。
    「半径40mなら、どこにでも、好きな形でボールを配給できた左足」と言われる、ブラジル歴代最高のランサドール(ロングパスの出し手)。
    いまでも、ことある事にペレと揉める彼のヤンチャぶりが面白いです。

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