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PostHeaderIcon ジーコの辞任劇

ジーコについて書くのは久しぶりです、けど今回は悪いニュースです。(ジーコファンさん、こっちのエントリーになってしまい、申し訳ありません)


日本でも小さく報道されましたが、フラメンゴの強化部長(サッカー部門のエグゼクティブ・ディレクター)を務めていたジーコが僅か4ヶ月で辞任しました。

 

それに昨季王者のフラメンゴは、いま降格の危機に瀕しており、今回のさらなるお家騒動はチームだけでなく、ブラジルサッカー全体に大きな波紋を及ぼしている。

 

フラメンゴのことは今年前半にも、リベルタドーレス杯に関するエントリーでクラブの内部情勢について、まさに伏魔殿といった感じで書きました。あのあと主力のアドリアーノやヴァグネル・ラブがチームを去り、さらに正ゴールキーパーのブルーノが元恋人の殺人事件に関与した疑いで逮捕(いま服役中)されるスキャンダルというおまけまでついた。

下半期に入り、ジーコがサッカー部門に就任したことで事態は好転すると思われたが、今回の辞任劇で、チームはさらに不安定な状況に陥ってしまった。チームはいま20チーム中15位(下位4チームが降格)、ここ13試合で1勝しかない。

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ジーコの辞任に至った経緯に関しては、要するにジーコに対して二つのあらぬ噂がクラブ内で広まり、それらを財務部に追及されたジーコは嫌気がさして辞めたということらしい。


その噂とはいわゆる職権乱用のことで、ジーコが就任後に獲得した選手たちの一部はジーコの息子たちが仲介してリベートを得たのではないかという疑い、さらに、ジーコが立ち上げたCFZというクラブ(日本からも大勢の選手たちが留学)と、フラメンゴの下部組織との間に、ジーコの立場を利用して、不正なスカウティングや移籍取引が行われたのではないかという疑念。ジーコ本人はどれも否定している。

 

一方で、クラブの金を牛耳る財務部は現在、緊縮財政を強いてるらしく(去年はお金をジャバジャバ使ったからねー)、ジーコの人脈を持ってしても新しい選手を簡単に獲得できない状況にあるらしい。特にFW不足にあえいでいたチームはここにきて、まったく勝てず、ジーコの辞任とともに監督のシーラス(86年W杯選手)もおそらく解任。

 

監督の後釜にはあのルシェンブルゴさんが取り沙汰されている。皮肉にもルーシャはジーコと幼なじみで、70年代にジーコと一緒にフラメンゴでプレーしていた。今季のルーシャは名門アトレチコ・ミネイロを率いて降格圏(18位)であえいでいたが、先月に解任されたばかり。あのルーシャもいまは落ち目なんすよ。

 

フラメンゴという巨大なクラブは、サッカー部門以外にもバスケット部やボート部(名前がクルベ・デ・へガッタス・フラメンゴだけに)や、実に様々なスポーツ部門の集合体であり、サッカーとは関係ない多くの人々が理事会を構成する(もちろん目玉はプロサッカーだが)。だから、沢山の派閥があって、そんな中で、クラブの会長になることは大変な社会的名誉を意味する。ちなみに、いまの女会長さんは元オリンピック代表水泳選手。

 

今回、どの派閥がジーコの足を引っ張ったのかはわからないが(どうやら財務部長とその上にある副会長が関係しているそうだ)ジーコが就任したにも関わらず、チームの調子が上向かないのをいいことに仕掛けた。

 

けどまあ、ジーコは完全なる被害者かというと、それはまた短絡的な見方で、ジーコだって前から反対派閥の存在を知っていたし、それらと戦いながら、内部のバランスを保ってサッカー部門を運営していくことが求められると心得ていたはず。疑惑に関しても財務部に対して潔白を証明すれば、それで済む話ではないだろうか。これらの嫌疑に関しては、辞任へのきっかけに過ぎないのでは。

 

しかし、チームが最も彼を必要としているときにクラブを去ったのには、ちょっと驚いた。いまもサポーターたちはジーコを絶対的に信じていると言うが。先日のボタフォゴ戦の後、選手達はジーコのために戦ったと言った…でも、ジーコのために、って意味がよくわからない。サポーター向けの空虚な言葉にしか聞えないところが、フラメンゴやコリンチャンスといった大衆クラブ特有の病だと思う。

 

要は、フラメンゴが万が一降格した場合、誰がその失態の責任を取るのか?というところだと思う。フラメンゴの推定サポーター数3千500万人ですよ、ちょっとした国だ。誰も、そんな巨大な責任を負いたくないでしょう。そこにジーコの意外なしたたかさがあるのかもしれない。あっしはサッカー人としてジーコを崇拝しているが、ジーコはストイックかつ複雑な人格の持ち主だと常々思っている。それはジーコのサッカー人生を見ればわかる。まさに、天国と地獄を味わった選手だ。

 

サッカーの醜い部分をイヤというほど知っている彼だからこそ、あのベルディ戦のPKでボールにつばを吐いた。あのとき、あっしもテレビで観ていたが、別に何の驚きもなかった。あの行為を非難する人は道徳的な日本には多くいるが、ジーコがマラカンで相手選手に右膝を故意に蹴られて、膝が反対側にひん曲がって、それまでの栄光の選手生命のすべてを失って、芝生の上でのたうち回っていたシーンを観た人はたぶんいない。そんな時代もあったのです。

 

しかし、よく考えてみれば、クラブ史上最大のアイドルがフロントに来れば、他の連中はやりにくいったらありゃしない。最初からサポーターが味方ってことは、絶対的な権力を持っているようなもの、あっしらの身近で例えれば、社長の息子が同僚になるようなものでしょうか。

 

そういえば我がインテル史上最大のアイドル、ファウカンも一度もクラブで役職についたことがない。それどころか、全国区のTVコメンテーターになってしまって、インテルとは中立的な関係にある(2006年のクラブワールドカップ優勝のときも、お祝い行事には一切不参加)。コリンチャンスのソクラテスは常に反体制的な位置、サントスのペレはまさに「サッカー界のスタビリッシュメント」的な位置だが、サントスのフロントには絶対参加しない。現在の例外はヴァスコのホベルト・ジナミッテ会長ぐらいか。ちなみにジナミッテさんはきってのワル、あのロマーリオまでをも従わせた。

 

結局、クラブの運営には、ピッチ上のものとは違った才能が必要なのでしょう。善良な人だからといって、務まる訳でもなし。それにもし運営に失敗したときには、せっかくの名声に泥を塗ることにもなる。ジーコのように、イタリアや日本、トルコ、ウズベキスタンなどで豊富な経験を積んだ人でも、古巣フラメンゴで成功することは容易なことではなかった。

でもジーコというシンボルを守れなかったところに、この大きなチームの小ささが見えた。

 

しかし、昨年優勝したフラメンゴがどうしてわずか10ヶ月で「いまクラブ史上、最悪の危機」と言われる事態にまで陥ったのか…

6 Responses to “ジーコの辞任劇”

  • スブッラ says:

    ジーコの右膝を砕いた選手・・・・
    確かWSDの増刊号で特集してました。写真も見ました。
    その記事だとタックルは偶然でその事故がきっかけで彼は50年のバルボウサ同様サッカー界から抹殺されたと書いてありました。
    故意だったんですか?

  • フッチブログ says:

    ユーチューブに動画があるんだけど…正直、お奨めしません。

  • 匿名 says:

    難しい問題ですね。
    表向き、家族ならびにCFZへの誹謗中傷をあげているようですが、色々な思い考えがあるのでしょう。
    フッチさん記事にしていただき、こまかな事もわかりました。
    ありがとう。
    現役のジーコの凄さを知っているので、もうあまりこういう事に関わってほしくないです。監督業も含めて。
    マスコミ側に居た方が、良いのでしょう。
    その方が栄光にも傷がつかない。
    そうペレのように。。
    ありがとうございました。

  • ジーコファン says:

    上のコメント、私です。
    ハンドルネーム入れるの忘れました。
    あしからず。

  • スブッラ says:

    フッチさん
    アルヘンに負けちゃいましたね。メッシのゴールは凄かった。彼はまさに本物。
    フッキが呼ばれてませんでした。日本戦で前田遼一にやられまくってたんで。アルヘンはアドリアーノやジュリオ・バチスタ、F・ジョレンテみたいな感じのスケールの大きなアタッカーが苦手だと思ったんですが。
    ロナウジーニョはドリブル、パス、シュートを駆使したプレイを見せてましたがああいう感じの役割ならエルナネスの方が今ならずっと上手くこなせると思ったんですが。セレソンとはすれ違いの連続ですね。

  • フッチブログ says:

    ご無沙汰しております。放置状態ですいません。
    ここのところ忙しくて参ります。アルヘン戦も実はハイライトしか観ていません。
    メッシとうとうブラジル相手に覚醒したようですね。
    マーノ監督は初黒星。まだ先は長いようです。こんなときは、フッキはいいかもですね。
    南米屈指のカードが中近東で行われるのかあ。

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