「ブブゼラと共に去りぬ」祭りのあとの後記
お祭りも終わってしまえば、残るのは退屈な日常、寂しいものですね…
しかし、今回も盛り上がりましたねえ…世界中が同時に、そして勝手に、
勝てば笑い、負ければ泣いた。
最後に笑ったのは、たった一つの国だけ。
大会も終わってみると、大会前から色んな考え方、色んな決めつけ、色んな勘違いがあったなあと気づく…いまも、大会の興奮に流されて、色んな結論、言葉が飛び交っている。
振り返ってみれば、まず、最初に思い出すのが、南アフリカのW杯は運営の面で失敗すると予想した人が多くいたこと。専門家、関係者までもが危惧したけど、蓋を開けてみれば、とくに大きな問題も無く閉幕した(もちろん、現地の事情は知りません)。あのブブゼラの音でさえ、いまとなっては懐かしいぐらい。
優勝したスペインは、良いチームとわかっていたが、これまでのスペイン代表のW杯での経緯から、本当に優勝すると思っていた人は少なかったと思う。
一方で、真の優勝候補と期待されたブラジル、そしてイタリアやイングランドなどはベスト4にすら残れなかった。
そして、今回はメッシによる、メッシのための大会になると予想された。86年大会の再現になると期待された。実際のアルヘンティーナは、マラドーナのふざげた振る舞いばかりが目立った。
メッシだけでなく、スーパースターと謳われたクリスチアーノ・ロナウド、カカ、ルーニーなど、まったく輝けなかった。とくに、ここ数年間、隆盛を誇っていたプレミアリーグで人気のあった選手たちがまったく活躍できなかった。我々は、プレミアリーグのマーケティングに踊らされていたのか?
これからは「世界はスペイン代表のようなサッカーを目指すべき」が一つのモットーになるだろうけど、スペイン代表のこれまでの「敗北の歴史」も合わせて経験したいという人々はいないだろう。でも、その積み重ねがあったからこそ、いまのスペイン・サッカーがあるはずなのに、スペインの成功の良いところだけをコピーしようたって、サッカーの神様は同意してくれないだろう。
日本代表に関しては、怪我の功名とでも言おうか、開幕前に追い詰められて、はじめて「日本サッカーの進む道」を見つけたというか、「全員で守って、少数でカウンターする」というスタイルを確立した。日本国内で、根拠なく「魅力あるサッカー」を提唱する人々を尻目に、この堅実なスタイルで結果を残した。これまで、ずいぶんと、継承すべきアイデンディティに悩み、回り道をしたが、ずば抜けたアタッカーが出てこないのだから、このスタイルでいいのではないか?東洋のイタリアだ。
トスタン氏などは、今回のスペイン代表に関しても「たしかに、一昔のブラジル代表を思い出させたが、残念ながら彼等にはまだ、ロマーリオやロナウドといった”超”のつくFWは出てきていない」。トスタンは世論に妥協しない。
スペイン代表のパスサッカーも、いわば比較論で「他の代表チームよりもパスを多用した」だけのことで、そればかりにこだわった訳でもないし、シャビ・アロンソ、セルヒオ・ラモス、フェルナンド・トーレスなどはパスサッカー派ですらないと思う。人々はスペイン代表に「バルセロナの残像」を重ねているのではないか?
オランダの英雄であり、カタルーニャの英雄でもあるクライフは「スペインが勝ってよかった、オランダはサッカーを潰そうとした」としごくまっとうだが、非国民的な発言を残した。つまり、クライフもとうとう綺麗事じゃ済まなくなった、というオチでした。
そんなバルセロナも大会後、グァルディオラ監督は再三、ホビーニョはチームに不要と発言したらしい。「いらねえっての!」(笑)
一方で、ブラジルの人々の可哀想なところは、毎回、W杯で優勝しなければならないと気負っているところ。よい選手達がいないと、絶対に優勝できないのに。だから、よい選手が育つことが前提なのだけど、ブラジルでは選手や監督は少しでも調子を落とすと、すぐに批判されて切り捨てられる。
すぐに切り捨てられたり、取って代われるのだから、選手達はチャンスが来れば海外に移籍したい。ときには、どんなクラブに移籍しているのかもろくに考えずに、移籍金に飛びつく。ロシアの極寒とか、東南アジアの辺地や、ヨーロッパの2部リーグの聞いたことも無いようなチームに。プロならチャンスに飛びつくのは当たり前だが、移籍先が合わずに貴重な時間をムダにするケースもしばしある。
この点が、ヨーロッパで同じように才能があって、クラブに大切に育てられる選手との大きな違いかも知れない。お金のためだけに、クラブを去る必要がない。
ドゥンガの4年間の仕事は多くの成果や新しい試みも残したはず、それらを吟味せずに、ただ結果だけを見て「失敗」と片付けるのは、あまりにも了見の狭い結論だ。
ドゥンガに呼ばれなかったスター選手に関しては、南アでの大会前合宿が開始して早々のころ、アドリアーノはマネーロンダリング疑惑でリオの警察で任意取り調べを受けている。W杯期間中、パウロ・エンヒッケ・ガンソは膝を手術、たったの19歳でもう膝にメスを入れた。ロナウジーニョは太鼓腹をビーチで披露、ロナウドは…まるで大福まんじゅうのように膨れあがっていた。
話によれば、敗退直後、ドゥンガは電話一本でCBFのテイシェイラ会長から解任されたそうだ。あんなに協会を背負って頑張ったドゥンガなのに…電話一本でクビ、会って労いの言葉もない。それを知って、「テイシェイラの野郎はみんなをクビにするけど、自分のクビは誰にも手をかけさせない」と言ったのは勇気あるレオン監督。
あっしがテイシェイラのがまガエル野郎の首をちょん切ってやりたいよ。ん?カエルには首がないって?クソー!
もちろん、ドゥンガも幾つかのミスをした。なかでも最大のミスは、大会期間中、マスコミと険悪な状態になってしまったこと。ブラジルのマスコミを牛耳るグローボ社と対立したことで、テイシェイラ会長も対応を迫られたはずだ。
ブラジル代表は8月10日に再結集、アメリカ代表と試合をする。それまでに新監督も決まるのか?
ロマーリオは「次の2014年は絶対に優勝しなければならない、だから、最高の選手達を呼ばないといけない」と言った。しかし、このすさまじい大役を誰が引き受けるのか?4年間、栄光と地獄の狭間に怯えながら生きる「人柱」になるのは誰だ?みんなで責任の押しつけ合いだよ。ロマーリオだって、偉そうなことは言うけど、ドゥンガのように代表監督を引き受ける度胸はないだろう、過去の栄光に泥を塗りたくはないだろう。
これから、ブラジルW杯開催に向けて、偉そうなことを言う人は一杯出てくるけど、本当に責任を背負える「男」は片手で数えられるほどだろう。
本当の男しか敗北を知らない。
ジョエウ・サンタナは引き受けたいと表明したが、たぶん、彼は「サクラ」。ダチョウ倶楽部のあの「私も、私も、私も…じゃあ、あなたどうぞ」のギャグ。ジョエウ爺さんはその器じゃない。南アフリカ代表すら務まらなかった。器で言えば、もうフェリポンしかいない。
フェリポンが、もし大役を引き受けるのなら、その前に「私も負けたら電話一本でクビを切るのか?あんたは責任をとらないのか?」とがまカエルに聞いてみればいいのに。
「美しくプレーしても、勝たなければ、何も残らない」ドゥンガは自分が何を言っているのか、わかっていたじゃないか!周りのみんなこそ、わかっていなかった。
W杯が終わってから4日後、ブラジル選手権が再開(Jも昨日)。4年に一度の機会が失敗に終わったかどうかはわからないが、とにかく、ブラジルサッカーは止まらない。ここから、また新しいクラッキたちを輩出してこそ、ブラジルサッカーの真の偉大さが証明される。
このブログに意見を書くのに気をつけようと思っているのは自分の言うことに整合性を持たせようとすることですが、大会が終わって自分のコメントを振り返ると・・・駄目じゃん自分!
と反省することばかりです。もっと勉強しないと。
改めて世間のイメージする事に惑わされず自分の意見を持つフッチさんの凄さを感じました。
フッチさん、こんにちは。
フッチさん、私が、このブログに出会って、そろそろ3年になります。早いものです。この間色々なことを、勉強させて頂きました。
フッチさんの鋭い分析力に感嘆し、又ジーコ、ファルカンの話題で盛り上がり、ブログを一寸休まれる前は、投稿して来る、他の方たちとも、意見交換をして楽しく勉強をさせて頂き、私の1ライフスタイルになっていました。ブラジレイロンの事をここまで深く掘り下げて論じられるブログは、他になかったですね。それだからフッチさんも大変なんですけどね。
今回の話題フッチさんらしい鋭い切り口に、私の考え方の間口を、もっと広げて行かなければ如何と思い、反省、反省です。
私がブラジルサッカーを知ったのは、子供の頃。ペレのバナナシュートです、日本でかなり話題(流行)になりました。私も友達とサッカーをする時は、よくバナナシュートだ。なんて出来もしないのに遊んだもんです。そのあと白いペレを知り、ジーコなんて言葉は知らなかった。最初は白いペレ。それがジーコだと知ったのは、その後。ある日テレビのニュースでフラメンゴのジーコを見て衝撃を受け、それからありとあらゆる伝を頼って、ジーコのビデオ、情報をゲットし、その後はクライフ、マラドーナを調べつくしました。でもジーコが1番だったなー、ペレは別格です。
そんなもんで、今回スペインが優勝すると82セレソンと重ねてしまう。厳密に細かく言えば全然ちがうんですけどね。
それはわかっているんですよ。わかっていても・・ね。
82セレソンが・・・・・WC取らせてやりたかった。
私は他に大好きな専門分野のスポーツを持っていまして、その練習にもサッカーをよく取り入れていました。
そんなもんで、素人ですが、これからも、このブログで、ゆっくり肩肘張らずに勉強させて頂きたいと思います。
これからもフッチさんよろしく、お願いします。
今のブラジレイロン全然わかりませんので。
情報もあまり入ってきませんしね。
次期セレソンの監督、色々考えるとやはりフェリポンですかね。
ドゥンガは案外日本の監督やれば良いかも。
スブッラさん、ジーコファンさん、コメントありがとうございます。
あっしはドゥンガは二度切っていますから(コパ・アメリカ開幕時と北京五輪)、ここで、三度目の切り捨てよりも、やはり、コンフェデ杯優勝、南米予選一位通過、W杯開幕時FIFAランキング一位といった実績を評価してやりたい。
ドゥンガには夢を見させてもらった。本当はみんなそうだった、オランダ戦までは…なのに、たった一つの敗北で、みんなから手の平を返されちゃうなんて。
コロラードのあっしには見過ごせない出来事でした。
みなさんのご意見おかげで、こうして書く意欲が湧くのですから、どうか気にせず、好きなことをドシドシ書いてください。
あっしの方こそ日々、学習、反省の連続です。
*フェリポン、昨日パウメイラスの監督に就任しました。一見、代表は遠ざかったように見えますが、ここから、クラブと代表の監督を兼任する選択もある。フェリポンはバカじゃないから、4年間フルのプランAでなく、プランBで行くという手もある。はたしてどうなるか…
フッチさん、みなさん、こんばんは。
自分は難しい事はよくわかりませんが(汗)…とにかくこれからどんな素晴らしいクラッキがセレノンを作り上げてくのか興味深々です。
恥ずかしながら戦術の事もよくわかりません。でも「この選手のこのプレーが凄かった!」って言えるようなセレソンを見たいです。ドゥンガセレソンで言ったら、W杯直前のアイルランド戦のカカー、グラフィッチ、ロビーニョの3人の連携で決めたゴールや、北朝鮮戦のマイコンのゴールとか…。
とりあえず監督が誰になって、来月のアメリカ戦で誰が召集されるのか?今回の敗戦の悲しさも晴れて、またセレソンが楽しみです。
レニーさん、こんにちは。
レニーさん。ご安心下さい
難しいことは、全然私もわかりませんよ(笑)
それで良いんですよ。
新生セレソン応援する事が大事です(笑)
難しい事書く必要もないしね。
わからないことは、フッチさんが教えてくれますよ。
ドゥンガに関しては現役時代のあの右足アウトサイドのロングパスがお気に入りです。彼が日本で書いた二冊の本は僕の青春時代の愛読書でした。貪るように読みましたね。中でも好きな個所はフランス大会の現場からの記述でした。
彼の采配に関しては文句は色々ありますが、今の時点で自分なりにいいと思った所は地味な存在だったエラーノを起用して実際本大会で2得点と結果を残した所だと思います。コートジボアール戦の左サイドからのボールをスルーしてマイコンに繋げたプレーも見事!エラーノみたいな選手ってフランスではルレイヤー(万能型MF)といってピレスやプティがそれにあたるそうですね。今後のセレソンで後継者がでて欲しいです。ドゥンガに抜擢された選手には他にラミレスもいてユーティリティ性を開花させましたね。この二人が欠場しちゃった試合が敗戦になったのは何といったらいいか・・・
欠点をあげるとすれば彼は地味な日の当たらない選手を開花させるタイプの監督だと自己評価していた。だけどその部分は監督として未発達だった。それがバチスタ、ジョズエが本大会で使えなかった事に繋がってしまった・・・そう思います。
悔しいのは大会前にドゥンガの敗北を望んでいた記者、具体例を挙げればNUNBERの竹澤哲などを見返してやれなかった事、それが心残りです。
W杯が証明したもう一つのことは「サッカーライターの書く勝敗分析はまったくアテにならない」ということ。
日本代表に関しても、ブラジル代表に関しても、各国の代表チームに関しても、世界中のライターさんたちは色んな事を書きましたが、まったくの的外れ。
「この天と地のあいだにはな、ホレーシオ、 哲学など思いもよらぬことがあるのだ」(シェークスピア)
相場用語に「ポジション・トーク」という言葉があります。いわゆる、自分の主張したい立場から物事を見ること、語ること。これが、多くのライターのやり方。(一部の監督やサポーターもそうだが)
本当に客観的な分析であれば「勝敗はわからない」と書くしかないはず。でも、そうすれば部数が売れない、視聴率を稼げない。
そう考えれば、試合をする前に何かを言わないといけないサッカーライターさんたちも可哀想な人々と考えることもできる。
ブラジルでも唯一といっていいほど、ポジション・トークから切りださないサッカー知識人がトスタン師匠。かつては、ペレのいた時代のブラジル代表のエースの一人で、引退後は医業に従事した彼はライターを生業とする必要はない。でも、彼は誰にも媚びない、妥協しない、その倫理感はドゥンガよりも極端だ。彼はあくまでも観た現象から何かを絞り出す。フロイトの心理分析を引用したりするところが面白い。
そのトスタンでさえ、たまに予想屋もどきをやらかして、すっころぶのだから、シェークスピアの言うことがいかに正しいか。
サッカーの本当の醍醐味はプレーすることと、応援すること。日本代表のキャプテンが「これからは、Jリーグを応援してください」と言ったのは、的を射ていたね。
スブッラさん
ナンバーに記事を書いた竹澤哲です。
たまたまこのブログで見つけたので返信します。
ドゥンガの敗北を望んでいた記者と書かれましたが
まったくそんなつもりで記事を書いたわけではありません。
ただオランダ戦でリードされたとき、あの状況を打開してくれる選手が
いたらということは、やはり強く感じました。
ドゥンガ氏には実際何度かインタビューしたことがありますし
彼のセレソンに対する気持ちは他と比べることができないぐらい強いことは
よくわかっています。ドゥンガの4年間が失敗だとも思っていません。
ドゥンガがやろうとしていたサッカーを批判したのではなく、ブラジルという国が優勝しなければならないという常に重荷を背負ってワールドカップに臨んでいるという事実。それがある意味、最近の大会では冒険できなくなってしまっているのではないかということを伝えたかったのです。
ブラジルが決勝まで行くことを望んでいましたし、あのスペインに唯一勝てるのはブラジルだけだと思っていました。オランダに敗れとてもがっかりしたので
敗北を望んでいたなどと書かれてちょっと悲しい気持ちになり、返信しました。
フッチブログさん、初めてブログを拝見させていただきました。
ブラジルへの強い気持ち、とてもよく伝わってきました。
自分のようなものが割り込んでしまい申し訳ありませんでした。
楽しいブログ、これからも楽しみにしています。
竹澤哲さん・・・・
すいませんでした。ついかっとなって軽はずみな事を書いてしまいました。
実はあなたが書いたGINGAの本を何度も繰り返して読んでいました。
本当にすいませんでした。気になさらないで下さい。
竹沢様、このような勝手気ままなブログに対して、実名でのコメントありがとうございました。
こちらのスブッラさんは真摯なブラジルサッカーファンでして、私としても、とても貴重な意見を頂いております。とにかく、スブッラさんには好きなことを書いただくよう、私の方からお願いしている次第です。
私の上のコメントも褒められたものではありませんが、これまでブラジルサッカーについて日本のサッカー雑誌で書かれてきたことは「天才プレーヤーが草のように育つ摩訶不思議な国」のような内容が多かったです。しかし、これまでのスーパースターたちが代表から去ったいま、ただ幻滅するのではなく、ブラジルサッカーの本来の姿をとらえる書き手が必要とされているようにも思えます。スーパースターをフィーチャーした方が雑誌は売れるでしょうが…
『ジンガ』私も買いました!竹沢様のように地道に取材をされる方なら、きっと新しい時代のセレソンについて書いてくれると期待しています。そのときはぜひ、このブログでも取り上げさせください。
スブッラさん、フッチブログさん
お返事まで書いていただきどうもありがとうございました。
それに対する返答が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
フッチブログさんの言われているとおり、お二人とも真摯なブラジルサッカーファンであることは文面からもとてもよく伝わってきます。
雑誌などでも南米特集を組んでもまだまだ売れない現状があり、スーパースターをとりあげるしかないこともあります。
でもこのようなブログが存在することに大きく勇気づけられます。これからも楽しいブログを展開していってくださいね。
私も何度かブラジルに足を運んでいますが、そのたびに新しいことを発見しますし、分からないこともたくさんあります。ブラジルの奥深さをつねづね感じている次第です。2014年のワールドカップがブラジルで開催されること。その2年後にはリオでオリンピック。ブラジルもこれから大きく変わっていくでしょうね。
ジンガの取材でたまたま会ったネイマールが育ってきています。彼がどのように4年後を迎えるかも楽しみです。また時々、顔を出させていただくこともあるかもしれません。その時はよろしくお願いします。もちろんブラジルサッカーファンの一人としてです。