最近のコメント

PostHeaderIcon ベルナベウ・ザ・ムービー

もしも、あなたがサッカー好きであり、20%だけの良い場面のために、一つの映画を観ることができる人なら『レアル・ザ・ムービー』は観る価値があるかも。
あっしは上の条件にあてはまったから観た。そして感動した。
そもそも、なぜブラジル・サッカー専門ブログがスペインの名門クラブの映画の話、と思われそうだが、ブラジル・サッカーと大アリも、大アリ、この映画には、現在サントスを指揮するルシェンブルゴの仕事ぶりが見事に記録されているのである。
そして、満員のサンチアゴ・ベルナベウで観客が総立ちでゴールを祝うシーン。このシーンをピッチレベルから映しているのである。それを壁一杯の映画スクリーンで観るんだから、まるでもう、自分が芝生の上にいるような気がして、鳥肌がたった。
マドリー・ファンじゃなくても、凄い映像。ロナウドやホビーニョたちは、こんなとこでプレーしてるのかあ…
Estadio Santiago Bernabeu
estadber3.jpg


なにかと、マドリディズモについて批判してきたあっしですが、実はマドリディズモのことなんか、全然わかっていない。スペインに行ったこともない。でも、ベルナベウには必ず行くことになりそうだ。
ネタバレは避けるつもりだが、映画の進行は昨シーズン後半の「レアル×バルセロナ戦」へと導く。このときの監督はヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ。
映画開始早々、エル・クラシコに向けてルーシャ(ルシェンブルゴの愛称)とスタッフ陣の打ち合せが始まる。このスタッフとはセカンド・コーチのマルコ・テイシェイラとフィジカル・トレーナーのアントニオ・メロの3人。全員ブラジル人。
ちなみに、いまサントスの監督を務めるルーシャのフィジカル・トレーナーも、同じくこのアントニオ・メロ。それに、ルーシャのセカンド・トレーナーは「ルシェンブルゴ校出身者」とブラジルでは言われ、現在FC東京のガロ監督もそのうちの一人。そもそもルーシャがレアル就任のときに、セカンド・コーチに呼ぼうとしたのがガロだった。
そして、このエル・クラシコの最大のキーポイントとなったのが、それまでレアルで不動の10番だったルイス・フィーゴのスタメン落ち。なんと、映画では、このときの決断について、ルーシャがブトラゲーニョとサッキに相談しているではありませんか。3人の会話のシーンだけでは、何のことかよく分らないが、内容からしてまさしく「フィーゴ外し」について議論していた。
練習場でのルーシャは、スペイン語とポルトガル語の混じった、もうメチャクチャのチャンポン語を話しているのがわかる。映画館で一人で腹を抱えて笑ってたあっしだが、近くに座っていた大学生風の女の子は気味悪かっただろうなあ。
あっしの記憶では、当時ロベカルがマスコミに「ウチの監督のスペイン語のヘタッピさときたら、ヒドイのなんのって、ギャハハ!」と大いにおちょくってたのに対し、ルーシャ本人は「チキショウ、俺だって恥ずかしいけど、いつかキチンとスペイン語をマスターしてやる」なんて悔しがってたっけ。
極めつけの映像は、ベッカムとの会話。あのとんでもない英語で指示しながら、途中で単語が出て来なくなると、勝手に笛を吹きはじめたりして、それでもベッカムはウンウンと頷いてるんだから、結構いい奴だ。
やがて、クラシコ当日のミーティング。このとき、ルーシャが行った言葉は、そのみょうちくりんなスペイン語にかかわらず、ジーンときた。ルシェンブルゴは人の心を打つ話をすることで有名だ。言葉の壁を越えてそれができるんだから、すごい。
いまサンパウロ州選手権の優勝にもっとも近いルーシャのサントスFCだが、今年2月、昨シーズンのブラジル選手権で屈辱的な敗北(0-7)を喫したコリンチャンスとの試合直前に、パラリンピックに出場するために努力する身体障害者たちのドキュメンタリー映像を選手達に見せて気持ちを奮い立たせたという。結果、選手達は狂ったように戦い、サントスはコリンチャンスを下した。
ブラジル・サッカー広しといえども、ルシェンブルゴと肩を並べるモチベーターはいない。
バルサ戦がはじまると、ルーシャはせわしなくピッチ脇で動き回る。スタジアム上段のスタンドから、セカンド・コーチのマルコ・テイシェイラが、フォーメーションの問題点を刻々とルーシャに報告していく。その的確な指示に、思わず身を乗り出して観てしまった。やっぱ、プロはどんな解説者よりも、遙かにスゲエや。
他にも、たとえばアフリカの少年の物語があるが、これは、まさにラブリー。サッカーへの愛情が美しく表現されている。
なんといっても、レアルを代表する男たちが、一生懸命働いて勝利を勝ち得ようとしている姿に共感した。応援するクラブとは関係なく、普遍的なサッカーへの情熱がそこにある。
それ以外は、つまり映画の殆どはバカバカしい映像がいっぱいある。明らかに、ワールドワイドな営業を狙った内容で、クラブの金儲けの思惑がまさに露呈しているのだが、そんななか、僅かだが貴重な映像があるということ。
冒頭では、貴重な映像が20%といったが、いまのハリウッドのアクション映画も、せいぜい、こんなものだし、金を払って観る価値があるかどうかは個人の問題。あっしは、ほんと満足した。
往年の輝きを失ったいまのレアルだが、その資産はとてつもなく大きい、そのことを確かめることができてよかった。
追記:古いベルナベウの写真めーっけ!
estadber2.jpg

416 Responses to “ベルナベウ・ザ・ムービー”

  • jumpin says:

    わたしの感想だったら多分ほとんどがケチをつけることになってたと思います(笑
    フッチさんの立場からだと違う局面を浮き彫りにしてくれますね。
    そしてフッチさんのレビューは
    ルシェンブルゴ監督の魅力的な部分を引き出していますね。これは好きじゃないとできないと思います。

  • フッチブログ says:

    jumpinさん、
    映画にはたしかに、jumpinさんの逆鱗に触れるに違いない内容もありましたねえ。
    あっしなんかは、レアルのことを少しでも良く知りたいと思って、あえて観に行きました。たぶん、あっしと同じ考えの人には、参考になる部分があったのも事実。
    なんといっても、ベルナベウの施設はスゴイ。こんなに素晴らしいスタジアムだとは思いませんでした。
    この映画観た一番の感想は「いつか自分もベルナベウで試合を観たいな」でした。できれば、ロナウドのいるうちに。

  • 「エトーのゴールというより、実況聞いて!」動画

    やっぱ、バルサはすごいわ! エトーもすごいけど、 実況聞いているだけで、 わ…

Leave a Reply for フッチブログ