最近のコメント

PostHeaderIcon 鬼軍曹フェリポン、語る

今週はブラジルで行われたサッカー監督シンポジウム(Footecon)では、数多くの監督が集まり、なかでもブラジル代表のパヘイラ監督、ドイツ代表監督クリンスマン、そしてポルトガル代表監督フェリポンことルイス・フェリペ・エスコラーリ監督などのセミナーが見られた。(他にもバレーボール代表監督、ベルナルジーニョのセミナーもあった)
フェリポンが語りはじめると、周囲は黙る、これが鬼軍曹の存在感だ。


現在、ブラジルの4大監督と言われているのが、ルシェンブルゴ(レアル)、パヘイラ(セレソン)、フェリポン(ポルトガル代表)そしてレオン(パルメイラス)だ。
インタビューに答えたフェリポンは次のように語った:
問:ポルトガルではフェリポン・ファミリーを結成することができたのか?(イタリア系のフェリポンにはマフィア用語の「ファミリー」がよく使われ、本人も冗談で受け止めている。彼は、上手い選手ばかりでなく、兄弟のように団結したグループを結成することで知られる)
フ:ああ。はじめは難しかったし、選手達の関係もバラバラだった。でも、今は一つのファミリーだ。02年のセレソンと同じ事ができている。チームはベテランから若手まで混じっていて、非常にバランスがいい。
問:ポルトガル代表はどこまで行ける?
フ:優勝といいたいところだが、まずはベスト8を目指す。どのチームも力が拮抗していて、これまで以上に競争が激しいW杯になると思う。
問:優勝候補チームはどこの国か?
フ:やっぱり伝統国だよ。まずは、ブラジルとアルゼンチン。フランスはジダンとマケレレが戻って良くなった。イングランドは技術的に向上した、相変わらずクロスボール頼みのサッカーだけどね。イタリアも芸術性が増した、それにドイツはホスト国だからあなどれない。
問:いまのセレソンは02年のセレソンよりも強い?
フ:それは、やってみないとわからない。言えることは、セレソンは上手く世代交代ができた。今のセレソンの選手たちは攻守の切り替えの意識が素晴らしい。まさにパヘイラの思想(注:へっぴり腰思想)が徹底している証拠だね。
問:ブラジルと当たることになれば?
フ:当たるなら、グループ・ステージで当たりたい。そうすれば、決勝まで当たる可能性もなくなるしね。いずれにしても、ポルトガルは第2シードだから、グループの第1シードはどこか強豪国になる。そのための気構えはできている。
問:ブラジルはスイスで合宿をはるけど、ポルトガルの合宿所は?
フ:ポルトガルは国内で合宿をはるよ。一部の練習は無料公開にして、国民との触れ合いを増やすつもりだ。選手たちにサポーターの熱気を感じてもらいたい。
問:あなたはポルトガルのサポーターたちに受け入れられているか?
フ:最初は反対の声が多くて厳しかった。でも、ユーロ2004で結果を残してから評価は変った。なんといっても、それまで特定の代表選手しか応援しなかったポルトガル国民にチーム全体を応援するように訴えかけた。これが、私のポルトガル・サッカーへの最大の貢献だと思う。
問:ロナウジーニョ・ガウショは06W杯のビッグネームに成れるか?
フ:ロナウジーニョを観る、という体験自体が素晴らしいことだよ。06年W杯では間違いなく輝く。テクニック面に加えてフィジカル面でも随分強くなった。レアル戦での2ゴールは素晴らしかった。ロナウジーニョを止めたかったら、棒で殴るしかないね、ハハハ。(注:ロナウジーニョがユース時代、フェリポンはグレミオの監督)
問:W杯の後の計画は?
フ:代表チームを率いるのは面白いね。W杯の後、どこかヨーロッパの代表監督を続けてもいい。まだヨーロッパで4、5年仕事するつもりだ(知ってる人も多いかもしれないが、フェリポンは昨年はじめ不調だったライカールトの後任者としてバルサからオファーを受け、レアルからも昨年末にオファーを受け、ルシェンブルゴを紹介している)。ブラジルには監督として戻る気はない。
問:セミナーでザガロTDは何を質問したの?
フ:新しいスライディング・ジャッジについて(正面からでも危険度が高いと見なされれば一発退場)、ヨーロッパではどこまで厳密に守られているのか、とザガロに聞かれた。正直、ヨーロッパの伝統国の主審は厳格に取ると思う(注:だといいんだが)。でも、中近東やアジアのレフェリーは大舞台で選手を一発退場にする勇気はないんじゃないかな。審判のレベルによって、プレーのしかたも考えなければならない。
といった本音トークだった。フェリポンはオランダを優勝候補にあげなかったが、忘れたのだろうか。審判のクセも研究する必要がある、とは知らなかった!!ポルトガル代表はセレソンにとって間違いなく怖ろしい相手だ。
ブラジルで言われているのは、南米のライバルはアルゼンチン、ヨーロッパのライバルはポルトガル。この2国は全然、セレソンのことを恐れない。むしろ、闘志むき出しでかかってくる。ラフ・プレーをしたり、暴言やツバを吐いたり、親の仇を討つ気持ちでかかってくる。有り難いことだ。
ポルトガル・サッカーは近年、素晴らしいプレーヤーを輩出するようになった。クリスチアーノ・ロナウドのような強靭なドリブラーに、リヨンのチアゴのようなテクニシャンなど、剛と柔を兼ねる巧みなスタイリストたちだ(デコも献上したしね)。彼等のブラジル・サッカーに対するライバル心は強い。海外でブラジル人選手が最も多くプレーする国はポルトガルであり、どの有名チームにも5,6人のブラジル人選手がいる。ポルトガル人がプロ世界で名を馳せたければ、ブラジル人選手を押しのけるしかない、という構図ができあがっている気もする。
そんなポルトガル・サッカーの頂点にブラジル人監督がいるのである。ポルトガル人の多くは、モウリーニョ、カルロス・ケイロス、ウンベルト・コエーリョといった名監督の名を叫び続ける。だが、当のフェリポンは野次を受ければ、受けるほどやる気がでると言う。さすが01年、瀕死のセレソンを復活させた鬼軍曹だ。
完全アウェーで結果を残そうとするフェリポン。こいつも男だぜ。
scolari.jpg

855 Responses to “鬼軍曹フェリポン、語る”

  • carles says:

    鬼軍曹の話、しびれますねぇ。
    この頃CLを見てて思うのですが、一部の審判を除いてはその国のプレーの質に合わせた笛を吹いているんじゃないかと。
    ですのでフェリポンが審判の研究をするというのは目からウロコ。勝つためにはその位しなきゃということですよね。
    前回のワールドカップでも誤審を起こしたのは残念ながらアフリカやアジアのいわゆるサッカー後進国のレフェリーでしだし。
    オランダを優勝候補にあげなかったのはドイツ開催だからじゃないかと訝ってみました。フェリポンもヨーロピアンナイズされてますね(笑
    それにしてもブラジルってこういう監督セミナーってよくあるんですね。知らなかったです。

  • フッチブログ says:

    Carlesさん、
    よく考えれば、フェリポンは中近東(サウジ・クウェート)、日本(磐田)で監督やってますからね。経験上言ってるんでしょうよ。
    ブラジルのサッカー諜報網を使えば、世界中の情報を得ることができますからね、これは大きいですよ。そう考えれば、主審のミス・ジャッジで泣かされたイタリアとかポルトガルは「情報戦」で負けた、ってことになるのでしょうかね?
    このFooteconというセミナーは今年で2回目で、昨年はルシェンブルゴとシャムスカなども公演して、ジーコも参加してます。内容は、すごく面白いですよ。

  • inoran says:

    こんなセミナーあるんですね!
    いやー、鬼軍曹さすがです。
    代表チームの監督が面白いなんてなかなか言えない言葉です。
    ポルトガルのサッカーを最近見ていないんでW杯はすごい楽しみです。
    今のポルトガル代表は完成度が高い、と聞いてるのでどうなることやら…
    そういえばNumber PLUSの「南米蹴球記。」買われました?
    アドリアーノの故郷の記事に何というか胸がいっぱいになりました。

  • フッチブログ says:

    inoranさん、
    今のポルトガルはフィーゴやルイ・コスタにもう頼ることのない、新しいチームだと思います。
    ブラジルの監督の良いところは、難しいこと言わず、本音で話をするところでしょうか。フェリポンは代表格ですよね。「俺の目の黒いうちは、ロマーリオは俺のチームでプレーしない」とか、言ったモンね。
    ナンバー買いましたよ、あっしも。

  • 元カリオカ says:

    ロマーリオが話に出てきたんで。
    彼は結局得点王に・・・(昨日カンピオナットブラジレイロが終了)。
    まあ得点以外での貢献が殆どないとは言え、恐ろしい。
    もうすぐ40歳ですよ!

  • フッチブログ says:

    元カリオカさん、
    ロマーリオ、得点王になりましたね。
    まあ、殆どがPKとゴッツァン・ゴールばかりでしたが。
    彼の嗅覚は年齢とともに衰えない、ってことですか。

  • カリスマ says:

    サッカーの鬼といえば誰??

  • フッチブログ says:

    カリスマさん、
    ブラジルで、サッカーの鬼といえば、
    ザガロかな、勇退しそうだけど。
    フェリポンは鬼軍曹。

Leave a Reply for 元カリオカ