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今週は日本中を騒がせた移籍話と、ブラジルとスペイン間で“お騒がせな”移籍話の二つがありました。
日本では、松坂大輔選手の移籍話が話題になりました。日本野球界の25歳のエースの移籍交渉権を得るために、ボストン・レッドソックスがおよそ5100万ドル(60億円)で応札。
たった一人のピッチャーのために、すごい金額です。松坂の年俸はまだ交渉で決まるそうですが、4年契約で年俸1500万ドル前後と、これまた破格。
これだけのスケールの金額がパッと出てくるのも、アメリカという世界最大の消費大国と、日本という世界最大の工業国の互いの経済力のプッシュアップあってのことだと、マスコミでも報道されました。
アメリカでプレーする松坂のイメージを利用して、日本の企業がアメリカおよび世界に向けて製品を宣伝する。その松坂の肖像権を利用してレッドソックス側は投資額を回収できる、と踏んでいるらしい。もちろん、松坂投手が活躍することが大前提ですが。
一方、ブラジルでは、フルミネンセから飛び出て、ここ、たった数ヶ月でセレソンで活躍して一躍注目された18歳の左SBマルセロがレアル・マドリードに移籍した。その移籍額は600万ユーロ、または770万ドル推定。長年、レアルの左SBを務めてきたロベカルの後釜として、ひとまず、レアルBに入団するらしい。推定年俸は40万ドル。


日本野球界の期待の星、松坂投手は近年、2004年日本シリーズチャンピオン、2006WBC優勝、大会MVP受賞。方や、マルセロはここ1年で出てきたばかりの期待の新星、と実績の違いはあれど、それ以上に、今回のこの二つの移籍ケースは、運営のしっかりした球団同士と、金持ちと貧乏クラブ同士の交渉の差とというものを見せつけられた感しがした。金額の差は当然として、移籍する選手への待遇、それに、なんといっても、大金に対する選手自身のポリシーの差というものを見せられた。
問題はマルセロの移籍にある。マルセロの移籍話は卑しい、なんとも乏しい、みずぼらしい。
彼を育んだフルミネンセはいまブラジル選手権で降格の危機にある。チームは今週、ずっと、合宿を張り、サポーターから遠ざかり、次節の試合をなんとか勝って、降格の魔の手から逃れようと、チームは一丸となって団結しようとしている。
そんななか、エース級の選手が一人、チームから離れ、マドリードでニコニコと入団会見を行う。それも、同じ日に、ブラジル代表はスイスで試合を行っている。ドゥンガ代表監督がマルセロを招集しなかったのは、フルミネンセの窮状を考慮してのこと。ところが、マルセロはちゃっかり、マドリードに渡ってチームのシャツを着て記念撮影。もう心はリオ(フルミネンセのホームタウン)にあらずって感じ。
それから二日後、ブラジルに戻って開いた会見では「自分はフルミネンセを助けたい。でも、今後、12月末まで僕がフルミネンセでプレーしていいかどうかを決めるのはレアル」と残念そうに、演技してみせた。
しかし、もっと驚愕なのはフルミネンセのフロントの発言「やっと、マルセロの金が入ってきたよ。これで、2ヶ月滞っている選手たちの給料や、他の支払いができる」と満面の笑み。いまクラブ施設の正門には、延滞した水道代や、電話代などを請求しに来る人が後を絶たないそうだ。
実はフロントは、すでに今年前半にマルセロを移籍させたかったようで(お相手はCSKAモスクワ)、レアルのオファーは渡りに船といったところらしい。
レアルの方も、冬の移籍マーケット解禁を待たず、選手を獲得するという抜け駆けを敢行。そこまでして獲得した選手にかかるリスクを考えれば、もうこれ以上、ブラジルでマルセロをプレーさせたくないだろう。
ところが、そんなフルミネンセの喜びに水をさしたのが、とある広告プロモーション会社。ブラジル国内のこの会社はマルセロの肖像権だけをフルミネンセから買い取っていたらしく、いま権利金について争議中。
レアルがCBFに入金した移籍金はひとまずお預け状態らしい。トホホ…フルミネンセが民事などで訴訟を起こせば、FIFAから制裁を受けるのは必須。しかしまあ、二羽のハゲタカが生肉を奪い合っている光景とでも申し上げましょうか。選手の肖像権を軸に投資を展開するレッドソックスのマーケティング戦略と比べれば、なんともさもしい。それでも、フルミネンセはユース育成部がしっかりしており、リオでのクラブで一番運営が安定していると言われている。
ブラジル代表のアンダーエイジ部門担当のブランコ氏(94年W杯優勝チームメンバーで、フルミネンセの歴史に名を残す名左SB)の言葉では「レアルはよくもまあ、セレソンの左SBをBチームでプレーさせるなんぞ、言ってくれたもんだ。マルセロが棒に振るであろうこの半年以上、ブラジル国内で、彼の先を越す左SBが出現しても、後悔しないように」と、マルセロの将来に疑問を抱いた。ブラジル全国の金の卵を見て回っているブランコが言うんだから、信憑性は高いかも。
「レアル、ブラジルの有望左SBを獲得」とメディアでは騒がれたが、ここでご意見を頂くpeixeさんから教えてもらったのだが、レアルは先の8月に別の「ブラジルの有望左SB」をレアルBからデポルティーボ・ラ・コルーニャに吐き出している。アヤックスから獲得した、昨年ワールドユース代表チームで活躍したフィリッピ・カスミルスキのこと。この選手が、いずれバリバリの左SBになって、セレソンA代表に呼ばれてレアルを見返すことを期待している。
しかしまあ、結局、ブラジルのクラブはこれ程度の移籍話でウハウハ、ケヘヘと喜ぶのが精一杯か。海外からオファーが殺到する将来性の高い選手も、口では出身クラブに対する愛着心を語るが、心では金勘定で忙しい。
ジーコの印象深い言葉に「私の時代、選手達は名誉のためにプレーした。いまは、どの選手も可哀想だ、金のためにプレーしている」。ドゥンガもこう言っている「金持ちになるためにサッカー選手になったんじゃない、サポーターに僕の名前を叫んでほしいから、プロの選手になった」。最近では、ジュニーニョ・ペルナンブカーノの言葉「自分はサポーターのためにプレーしている、あの熱気を感じて何も思わない選手なんて、ウソつきだ」。こういう選手もいたもんだ。
もはやヨーロッパのクラブに移籍するのはブラジル人選手のすべての夢となった。リスクの多い職業で、千載一遇のチャンスをモノにしない手はない。でも、そんなときこそ、その選手の人間性が垣間見えるのである。チームを去っていく選手の後ろ姿はサポーターの心に永遠に刻まれる。
マルセロは将来、セレソンの左サイドを背負って立つ逸材かもしれない、でも、彼がレアルに移籍したとき、こんなことが起きていた。
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667 Responses to “移籍してよかったねえ”

  • peixe says:

    フッチさん。 野球ネタからとは 新鮮ですね(笑)
    松坂は日本では やり尽くした感もあるので向こうで思う存分頑張ってもらいたいです。 しかしまぁ60億とは・・・西武の全選手の3年分の年俸がまかなえてしまうらしいですね。凄ぇ
    マルセロ君の件>改めて読ませていただくと・・・
    マルセロ本人も、フルミネンセも、 レアルも二ッコニコ。
    結局割りを食うのは、降格のヤキモキ感真っ只中のサポーター?。
    FLUのキャプテン、マルコンは「心良く送り出してあげたいし、向こう行っても頑張ってねぇ」なんて言ってるようですが、チーム全体の士気は、今はマルセロの事よりもA残留第一に向けられているでしょうね。マルセロが居なかったから降格したなんて 死んでも言われたくないだろうに。
    プロなんだから勿論お金もより良い環境面が大事なのは分かりますが、あんたまだ国内で何もやり遂げてないでしょう!と言いたい。
    私はサンチスタだけど、FLUの試合やっていれば「マルセロでも観るか!」と思うし。アンデルソンやセウシーニョももうちょっと国内で見ていたかったし。 年々クラッキが居なくなって行ってると思いません? 
    各チームのフロント もっと頑張れよ!どうせなら小銭じゃなくて、大枚稼げよ!
    フィリッピは デポルに居たのですか☆ あそこもブラジル人が活躍出来るイメージがあるので頑張って欲しいですね。彼も元をただせば アヤックスに青田買いされたくちなのですが、名前から言って東欧系
    彼が元々二重国籍を持っていたのかは定かではないのですが、二重国籍取得しやすい身分で、ユース以下の代表にえらばれると、育成に定評のあるヨーロッパのクラブに青田買いされる傾向大 の印象があります。 
     

  • フッチブログ says:

    peixeさん、
    結局、フルミネンセは引き分けちゃいましたね。
    まあ、来週には、マルセロの今季のフルミネンセでの残り試合の参加について、マドリード王国から通達が来るそうですが、いまになって考えてみれば、今週の会見パフォーマンスも、つまり「みなさーん、この選手は我々が買いました、彼はもう我々のモンです、そこんとこ、ヨロシク!」みたいなニュアンスだったのね。
    ホビーニョのときは、まだサントスで数試合やったけど、今回は無いかも。シシーニョのように、12月のブラジルシーズン終了から、すぐヨーロッパシーズンに突入(彼の場合、W杯もあって、まとまった休みなし)選手の疲労を考えれば、妥当な対応策かもネ。
    でも、いよいよフルミネンセがやばくなったら、こうした些細なことが憤懣の種になるのは明白。
    >プロなんだから勿論お金もより良い環境面が大事なのは分かりますが、あんたまだ国内で何もやり遂げてないでしょう!と言いたい。
    ほんと、ほんと。あっしがホビーニョとか、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ、ヒカルジーニョなどをリスペクトするのは、彼等は国内で充分、サポーターに還元したから。このことは先々にまた重用になってきますよね。
    チームが降格の危機にあるのに、それを見捨てて、海外に移籍しちゃうような、そんな選手にセレソンの重役が務まりますかいな。
    「いまは、フルミネンセと共にシーズンを戦い終えたいから、その後に、移籍を発表してもいいですか」こんな、単純なことが言えない、考えつかない。
    レアルの白いシャツを手にすると、カメラのフラッシュがパシャ・パシャと光る、生まれて最高の舞台、最高の笑顔。ああ神は彼に才能を与えたもうた。

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