フェリッペ、ブラジル・サッカーの真髄
世界的に有名なブラジル人選手といえば、殆どの人がヨーロッパでプレーする5,6人のクラッキの名を挙げるだろう。
しかし、ブラジル国内には海外に「輸出」されることのない、あるいは海外の水に合わず、直ぐもどってくる芸術家たちがいる。そのなかでも「国宝級」なのが現在、リオのフルミネンセでプレーするフェリッペ(またはフィリッピ)。
ブラジルでは50年代後半、ガヒンシャが出現して以来、ゴールだけがサッカーゲームの最大の喜びではなくなった。
ブラジル文学史上最高の天才(ポルトガル語を作り替えたといわれる)にして、名サッカー・コラムニストだったネルソン・ホドリゲスは58年のコラムでこう言っている。
「それまでのサッカーは情熱と残虐性が入り混じったスポーツだった。観客は試合中に「潰せ!」、「削れ!」といった叫び声を発することしか知らなかった。そこにガヒンシャが現われて、サッカーに楽しさをもらたした。ボールを受けたガヒンシャがドリブルをはじめると、人々は笑った。自分の応援しているチームなど忘れて、みんな幸せいっぱいに笑った」。
これがブラジル・サッカーの原点のひとつである。ゴールよりも記憶に残る瞬間、ドリブラーが魅せる芸術に観客が酔いしれる瞬間である。ヨーロッパに渡ったクラッキたち、デニウソン、ロナウジーニョ、ホビーニョ、ロナウド、ヒカルド・オリヴェイラ(全員、今季スペイン・リーグでプレーすることは偶然ではない。そういえば私がこれまで見た最高のスキルを持つプレーヤー、ジャウミーニャもリーガで名を馳せた。あと、リバウドも)などは天性のドリブラーである。しかし彼等はヨーロッパで成功するために、理性的にドリブルを抑えることを覚える(デニウソンだけ例外)。
そんなヨーロッパ・テイストに合わないドリブラーたちがブラジルにいる。現代のシステム・サッカーに当てはまらない男たち。ピッチ脇の監督の命令を無視して、ただひたすらドリブルを仕掛け、相手を抜いては止まり、戻ってきた相手をもう一度抜いてみせる。スペインでいうところの闘牛士(だから彼等の一部はリーガで居場所を見つける)。
そんなガヒンシャの息子達の代表格がフェリッペだ。現在28歳の彼は、一時はセレソンの一員になりブラジル・サッカーの将来を担う逸材として期待された。98年のトヨタ・カップではバスコ・ダ・ガマの一員として来日している。02年にはトルコのガラタサライに1年いたが、ヨーロッパの「フィジカル・サッカー」に辟易して帰ってきた。今はフルミネンセの中盤のアルマドール(仕掛け人)として自由奔放なプレーを魅せている。昨年、試合中の暴行による半年の出場停止処分(フェリッペは試合中多くのファウルを受けるため、いざこざが絶えない)から復帰したばかりだ。
下記のリンクでフェリッペのドリブル・スキルが確認できる:
(現地の個人サイトのようで、ファイル・ダウンロードは自己責任でお願いします。一部のファイルが巨大で要注意。ここを気に入った人は、「Back」を押してルート・ディレクトリーに行けばさらに凄い映像がありますよ)
http://geocities.yahoo.com.br/felipe_dribles/
左利きのフェリッペはつい数年前まで、左SBとしてロベカルに取って代わると期待された。現に98年W杯の後、彼が左SBのレギュラーを務めた。しかし、フッチブログ的には、このポジションの選択が間違いだった。フェリッペはドリブラーなのであり、性格上ディフェンスはからっきしダメなのである。本人もそれに気づくのに、多くの時間を無駄にした。守備を免除された彼のプレーは自然体で、いまブラジル選手権の見所のひとつとなっている。あまり楽しい話題のないリオのサポーターたちにとっては実に嬉しい存在である。
フェリッペはボールをもらうと必ずドリブルする。それも、一度ピタッと静止して、次にモーションとは逆方向に抜く。DFはまったく反応できない、達人の技。横歩き(カニ歩き)しながらドリブルするときもある(これは、他にはデニウソンとジャウミーニャぐらいしか見たことがない)、ときには抜いてからわざわざ立ち止まって相手DFが戻ってくるのを待つ、そしてまた繰り返す。
フェリッペを観るために入場料を払う人は多い、彼等にとってゴールなんざどうでもいい。模範的なプレーヤーよりも、システムうんぬんよりも、僅かのファンタジーの瞬間を共感したいのである。世界の檜舞台に現われない、FIFA年間最優秀プレーヤーにもノミネートされない「ドリブル・バカ」、彼等こそブラジル・サッカーの真髄である。
フェリッペが「芸術」を作り始める(フラメンゴ時代)
いーですね。ドリブラー。
私はフィジカルゴリゴリサッカーよりも相手の股をいかにして抜くか!しか考えてないようなドリブラーの方が大好きです。最近少なくなって寂しいですが….
くじらのおっぽサン、
共感いただけて光栄です。
フェリッペほどのドリブラーはブラジルでもめったに出現しませんから、宝物ですよ。
こんばんは。ドリブルで抜いて、また抜いた相手に追いつかれて抜く、いいですね。ドリブル自体が目的みたいなプレー。ブラジルでしか見られないドリブラー、欧州のサッカーのスタイルにまったく背を向けているところが良いです。でも、なかなかブラジルサッカーみていても、そういうプレーに最近はお目にかかれませんね。
Masatoさん、
一見、意味のないドリブル、
でも相手に、「こいつからは、まずボール取れねえ」という心理面での有利性ってありますよね。
ブラジル・サッカーもグローバル化し、世界もブラジル化していますからね、
よっぽど稀有な才能でないと注目されないですよ。
でも、ドブリラーを継承する若手はいるようですよ。
(U17にクルゼイロのケルロンとグレミオのアンデルソンといった、天才クンが二人います)
こんばんは。我慢できなくて教えていただいているリンクの映像全部見てしまいました。。。
フェリペむちゃくちゃですね。。。
kerlonも見ました。この小僧もむちゃくちゃですね。恐ろしいです。アンデルソンもこの子なみにすごいんですよねきっと。恐ろしい。
昨季はバレンシア戦5-1のアドリアーノの全てに一番衝撃を受けたのですが、フッチさんのお陰で、今年はどのブラジル人が度肝を抜かさせるのか楽しみです。
最後のデザートに前回教えて頂いた、リベリーノのミドルと異常な打点のペレのヘッドを観て寝ます。
おやすみなさい。
今日もありがとうございました。
flavanchaさん、
どうも、お気に召されたようで光栄です。
ケルロンのヘディング・ドリブルの名は「アザラシのドリブル」だそうです。いまブラジルで話題のトリックです。
(でもここだけの話ですよ、すぐに海外に持っていかれちゃうから、笑)
アンデルソンもキレキレです。もうFCポルトと契約していますが、18歳未満なので国外でプレーできないのです(CBFの新しいルール)。
ほかにも、マラドーナの見たことない古い映像もあって、圧巻ですよね。
そういえば、小ウサギ(サビオラ)はやっとチームが決まりましたね、ルイス・ファビアーノとツートップだろうか。
こんばんは。
記事のタイトル見た時一瞬スコラーリの事かと思ってしまいました。
彼の事知らなかったです。凄いですねー。
思わず幾つか保存しました。
ドリブラーと言えばオルテガの「余計な切り返し」が好きだったんですが、フッチブログさん的にはoutですかね。
アルゼンチンだし(笑)。
オラー、Superfectaさん
いえいえ、スコラーリじゃありませんよ。
スコラーリは現役はDFでドリブラーにやられっぱなし、だったそうですよ話では。
“ブリート”オルテガ、最高っす、彼も「ピッチ上のチャップリン」ですからね。
アルゼンチン代表プレーヤーで嫌いなのは基本的にいないですよ(それ以外はよく知らないし)。
今季はメッシにも期待しているんですが、どうなることやら。